なぜ介護職は退職する人が多いのか

なぜ介護職は退職する人が多いのか
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人手不足が深刻な介護業界

介護労働安定センターが行った調査によると、人手が足りていないと感じている介護施設は2016年時点で62.6%にも上っていることが分かりました。前年よりも1.3ポイント増えて悪化していましたが、それは「賃金の不満」「社会的評価の高さ」「業務の大変さ」などに理由があると考えられています。
人手を確保するために、政府も2015年度の介護報酬改定で処遇改善加算を拡充しましたが、改善には向かっていません。

介護職員の退職理由とは?

退職理由は人それぞれ違いますが、その中でも「職場の人間関係」を理由として挙げる人が全体の23.9%と最も多くなっていました。それに「結婚や出産・育児のため(20.5%)」、「施設の理念や運営の仕方に不満がある(18.6%)」が続き、予想外なことに人手不足の原因のひとつとされている「賃金の低さ」は16.5%とそれほど多くありませんでした。
この結果から施設側と職員側の「介護職員が辞める理由」は大きくずれていることが分かります。この認識のずれを修正しない限り人手不足問題はいつまでも解消しないでしょう。

退職理由から対策を考えてみよう

人手不足になる理由を施設側は「賃金の低さ」や「業務の大変さ」だと思っていますが、実際は「人間関係」や「理念や運営の仕方」が理由で退職する人の方が多くなっています。
介護職員の退職理由の上位2つ、「職場の人間関係」と「施設の理念や運営に対する不満」を合わせると全体の48%、約半数近くを占めますが、この2つの退職理由を解決できれば約半数近い退職者を引き止めることが可能になります。職場は学校と違って仲良し集団で行動できるわけではありません。同僚の中には気の合わない人やそりが合わない人がいる可能性もあります。仕事をスムーズに進めるために個人的な感情はコントロールして接するのが社会人としてのルールですが、介護の仕事は基本的に同じメンバーで仕事をするため、人間関係が原因でストレスをためてしまう人も少なくありません。
特に、人数が少ない夜勤を気の合わない人とするストレスは相当なものです。規模の大きな施設であればいくつも事業所を抱えているため、異動して人間関係をリセットできますが、異動が少ない部署の場合は気の合わない上司や同僚と離れる機会はほとんどないため、ストレスを抱えたまま働くことになります。
また、介護施設には介護職員だけでなく看護師も働いていますが、介護職員と看護師の関係性の悪さに悩んでいる施設もあります。仕事の内容的にどうしても指導する立場になりやすい看護師の言動を高圧的だと感じる介護職員が多いせいか、対立関係に発展しやすいようです。